結婚を機に、愛知県豊田市に来ました。
それから14年。気がつけば、人生の長い時間をここで過ごしています。
豊田市には、この土地で生まれ育った人がたくさんいます。そんな場所で県外出身の私が子育てをしていると、ときどき「これは豊田では普通なのかな?私にとっては不思議なことだけど。」と戸惑うことがありました。
幸い、同じように県外から来たママたちと話すと、「わかる」と笑い合えることも多い。だから、自分だけが変なのだと思い悩むことはありませんでした。
とはいえ、こういうことって、わざわざ誰かに話すほど重要なことでもありません。
「これって豊田だけの不思議な習慣だよね」
家族の中ではそんな話をしても、外では黙って周りに合わせる。それが自然でした。
豊田で出会った人たちは、本当に穏やかで親切な人が多く、私は人間関係で困った記憶がほとんどありません。きっと、この居心地のよさがあったからこそ、当初想像していたよりずっと長く、14年間も私はここで暮らしているのだと思います。
ただ、振り返ってみると、この14年間は、私の人生で一番「話をしなかった」時期でもありました。
何を言っていいのか、どこまで自分の考えを口にしていいのか、よくわからなかったからです。
「今日は人が多いね」
「明日は晴れるらしいよ」
いつの間にか、そんな当たり障りのないことを話すのが上手になりました。
私はもともと、自分の考えを話すことが好きな子どもでした。
子どもの頃から比較的自由な環境で育ち、思ったことを話し、自分の考えを言葉にする機会もたくさんありました。
それを思い出したのは、今年の冬です。
14年ぶりに学生時代の友人たちに会いました。
彼女たちは、昔と同じように私に話しかけ、私も昔と同じように話していました。
その様子を見ていた娘は、少し驚いていました。娘が普段見ている私は、家で疲れている静かなママです。
そのとき、私自身も驚きました。
「ああ、私って、こんなにしゃべる人だったんだ」
そして思い出したのです。
私は本当は、人と話すことが好きだった。
考えることが好きだった。
そして、それを言葉にすることが好きだった。
子育ても少しずつ手を離れ始めました。これからは、自分の時間が少しずつ戻ってきます。
だから私は今、その先の準備を始めようと思っています。
もっと人に会いたい。
もっと話したい。
そして、14年間の暮らしの中で、口に出さずに心の中にしまってきたことも、少しずつ言葉にしてみたい。
静かに周りに合わせて暮らすことを覚えた14年間。
今度はこの街で、もう一度、自分の言葉で話してみようと思っています。
